見逃しがちなリン酸鉄リチウムイオンバッテリーのデメリット

災害時やアウトドアで活躍するポータブル電源。その中でも、近年注目されているのが「リン酸鉄リチウムイオン電池」を搭載したモデルです。

「リン酸鉄リチウム電池って、一体何がそんなに良いの?」「他の電池との違いは?」と疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、リン酸鉄リチウム電池のメリットだけでなく、デメリットについても詳しく解説していきます。また、実際にどのようなポータブル電源がおすすめなのか、具体的な製品も交えながらご紹介します。

ポータブル電源選びで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

リン酸鉄リチウム電池とは

リン酸鉄リチウム電池は、一言で言うと「とっても安全な電池」なんです。

電池の心臓部であるプラス極とマイナス極に、リン酸という物質を使っているのが特徴です。このリン酸が、電池が熱くなった時に暴走してしまうのを防ぐ働きをしてくれるんです。

リン酸鉄リチウム電池のメリットとしては、3つほど挙げられます

  • 熱に強く、発火や爆発のリスクが低いので、安心して使える
  • 繰り返し充電しても、性能が落ちにくいので、長持ちする
  • 重金属を使わず、リサイクルもしやすいので、環境への負荷が少ない

三元系リチウムと比較したうえでのメリットもお教えします!

リン酸鉄リチウムのメリット

安全

ポータブル電源は、災害時やアウトドアで非常に便利なアイテムですが、中には発火してしまうリスクも抱えています。過去には、ポータブル電源の発火事故がニュースで取り上げられたこともありました。

これは、多くのポータブル電源に使われている「三元系リチウム電池」という種類の電池が、高温になると熱暴走を起こしやすく、それが原因で発火してしまうことがあるからです。

一方、「リン酸鉄リチウム電池」は、この熱暴走が起こりにくいという特徴を持っています。高温になっても安定しており、発火するリスクが非常に低いのです。まるで、火に強い金庫のようなイメージでしょうか。

つまり、安全性という面では、リン酸鉄リチウム電池を使ったポータブル電源の方が、三元系リチウム電池を使ったものよりも安心して使えると言えるのです。

例えば、キャンプ中にうっかりポータブル電源を高温になる場所に置いてしまった場合、リン酸鉄リチウム電池であれば、発火の心配をせずに安心して過ごすことができます。

バッテリーの寿命が格段にアップ

リン酸鉄リチウム電池は、特に寿命のの長さが大きな特徴です。例えば、スマホのバッテリーをイメージすると分かりやすいかもしれません。毎日充電を繰り返していると、だんだんバッテリーが劣化して、以前と同じように使えなくなることがありますよね。これは、バッテリーの寿命が尽きてきたからです。

リン酸鉄リチウム電池は、このバッテリーの寿命が非常に長いことが特徴です。一般的な三元系リチウム電池が約600回の充電を繰り返すと寿命を迎えるのに対し、リン酸鉄リチウム電池は約3,000回と、なんと約5倍も長持ちすると言われています。

つまり、リン酸鉄リチウム電池を搭載したポータブル電源は、頻繁に使い捨てにするのではなく、長く愛用できるということです。例えば、キャンプに年に数回行く方であれば、リン酸鉄リチウム電池のポータブル電源は、数年、いや、もしかしたら10年以上も使い続けられるかもしれません。

なぜリン酸鉄リチウム電池はこんなに長持ちするの?

これは、電池の素材や構造の違いによるものです。リン酸鉄リチウム電池は、他の種類の電池と比べて、充放電を繰り返しても劣化しにくい性質を持っているのです。

放電しにくい

リン酸鉄リチウム電池は、特に自己放電が少ないという大きなメリットがあるのです。

自己放電とは、電池を何も使わなくても自然に放電してしまう現象のことです。三元系リチウム電池は、温度変化に弱く、特に寒い場所では自己放電が加速しやすい傾向があります。そのため、冬場にポータブル電源を屋外に置いておくと、使いたい時に十分な電力が残っていないということが起こりやすいのです。

一方、リン酸鉄リチウム電池は、熱にも寒さにも強いという特徴があります。そのため、外気温の変化に左右されにくく、自己放電が非常に少ないのです。つまり、リン酸鉄リチウム電池を使ったポータブル電源であれば、冬でも安心して保管しておけるということです。

リン酸鉄リチウム電池は、三元系リチウム電池に比べて自己放電が少ないため、長期保管に向いている電池と言えます。特に、キャンプやアウトドアなど、気温の変化が激しい場所での使用を想定している場合は、リン酸鉄リチウム電池を選ぶことをおすすめします。

環境にやさしい素材

三元系リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を持つため、少ない容量で大きな電力を出すことができます。そのため、スマートフォンや電気自動車のように、高い性能が求められる製品によく使われています。しかし、この電池を作るために必要なコバルトという金属は、非常に高価で、採掘の際に環境汚染や人権問題を引き起こすことも少なくありません。コバルトは「血のダイヤモンド」や「命を削って掘る鉱石」と呼ばれることもあるほど、その採掘は過酷なのです。コバルトの粉塵を吸い込んでしまうと、健康に悪影響を及ぼす恐れもあります。

一方、リン酸鉄リチウムイオン電池は、三元系リチウムイオン電池に比べてエネルギー密度は低いものの、安全性が高く、長寿命であることが特徴です。そして何より、主な材料が鉄であるため、コバルトのように高価な金属は必要ありません。鉄は地球上に豊富に存在する資源であり、製造コストも比較的安価です。そのため、リン酸鉄リチウムイオン電池は環境への負荷が少なく、より持続可能なエネルギーとして注目されています。

つまり、リン酸鉄リチウムイオン電池は、地球環境にも人にも優しい、よりエコな電池と言えるのです。

廃棄が簡単

ポータブル電源の廃棄って、実はとても面倒なんです。家電量販店では回収してもらえず、自治体に問い合わせ、お金を払って処分しなければならないケースがほとんど。

しかし、リン酸鉄リチウム電池を搭載したポータブル電源は、その長寿命性が魅力の一つ。一般的なリチウムイオン電池と比べて、はるかに多くの回数充電と放電を繰り返すことができるんです。

つまり、ポータブル電源としての役目を終えた後でも、まだまだ使える可能性が高いということ。メルカリなどのフリマアプリで出品すれば、必要としている人に譲ることができ、お金になるケースも少なくありません。

リン酸鉄リチウムのデメリット

値段が高い

リン酸鉄リチウム電池は、安全性の高さや長寿命といったメリットがある一方で、価格が高いというデメリットも抱えています。

例えば、同じような容量のポータブル電源を比較した場合、三元系リチウム電池を使ったものは3万円以下で手に入るものが多く見られます。しかし、リン酸鉄リチウム電池を使ったものは、それよりも少し値段が高くなる傾向があります。

これは、リン酸鉄リチウム電池の製造コストが、三元系リチウム電池よりも高いためです。

もし、できるだけ低予算でリン酸鉄リチウム電池のポータブル電源を購入したいと考えている場合は、容量を少し小さめのものにするという方法もあります。容量が小さくなれば、それだけ価格も抑えられることが多いです。

販売商品が少ない

商品の選択肢が少ないのもデメリットです。

これまで、ポータブル電源といえば、三元系リチウム電池を使ったものが主流でした。そのため、様々なメーカーから多くの種類のポータブル電源が販売されており、用途や予算に合わせてぴったりの製品を選ぶことができました。

しかし、リン酸鉄リチウム電池を使ったポータブル電源はまだ歴史が浅く、取り扱っているメーカーや製品の種類が限られています。安全性を重視してリン酸鉄リチウム電池を選ぶ人は増えているものの、自分の希望にぴったり合う製品を見つけるのが難しいという状況が現状です。

例えば、大容量のポータブル電源が欲しいけれど、リン酸鉄リチウム電池の製品では、まだ容量が小さいものしか販売されていないといったケースがあります。

今後、リン酸鉄リチウム電池のポータブル電源のラインナップは増えていくと考えられますが、現時点では、三元系リチウム電池のものに比べると、選べる製品が少ないという点は覚えておきましょう。

サイズ、重さともに大きくなりがち

リン酸鉄リチウム電池は、安全性が高く寿命が長いという優れた特徴を持つ一方で、サイズが大きくなりがちというデメリットがあります。これは、同じ容量の電気を蓄えるために、他の種類の電池よりも大きなスペースが必要になるからです。

例えば、キャンプで使うポータブル電源をイメージしてみてください。同じ容量のポータブル電源でも、リン酸鉄リチウム電池を使用していると、三元系リチウムイオン電池を使ったものよりも、大きく重くなってしまうことがあります。そのため、持ち運びが少し不便に感じられるかもしれません。

ただし、技術の進歩は目覚ましく、近年ではリン酸鉄リチウム電池のエネルギー密度が向上してきています。

エネルギー密度とは、簡単に言うと、同じ大きさの電池にどれだけの電気を蓄えられるかを示すものです。

エネルギー密度が上がれば、より小さなサイズで大きな電力を蓄えられるようになるため、将来的には、リン酸鉄リチウム電池を使ったポータブル電源でも、今よりもコンパクトで軽量なものが登場する可能性があります。

エネルギー密度が低い

エネルギー密度が低いとは、同じ大きさの電池で蓄えられる電気の量が、他の種類の電池(例えば三元系リチウムイオン電池)に比べて少ないということです。これは、まるで同じ大きさの容器に、水よりも重い砂を入れた場合、水の方が多い量が入るようなものです。

例えば、キャンプに持っていくポータブル電源をイメージしてみましょう。同じ大きさのポータブル電源でも、リン酸鉄リチウム電池を使ったものと、三元系リチウムイオン電池を使ったものとでは、一度に使える電気の量が大きく変わってきます。三元系リチウムイオン電池を使ったポータブル電源の方が、より多くの電気機器を長時間使うことができるでしょう。

これは、リン酸鉄リチウム電池の材料の特性によるもので、現在の技術ではなかなか克服できない部分です。しかし、多くのメーカーが、より高エネルギー密度のリン酸鉄リチウム電池の開発に取り組んでいます。近い将来、より多くの電気を蓄えられるリン酸鉄リチウム電池が登場する可能性も十分にあります。

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